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俺の知らない事実が多かった。
俺は"ヤツラ"が勝手にやって来て、俺達から無理矢理土地や資源を奪ったものだと、ずっと思っていた。
「君達にも言い分がある事は理解している。
いきなりやって来た我々を警戒し、土地を要求されてもすぐには『はい、そうですか』と言える筈もない。
だから我々は我々を理解してもらおうと、様々な努力をしてきた。
本当はこのように武力に訴える真似などしたくはなかったのだ」
どんなに力説されても、"ヤツラ"は俺達の全く違う姿形だから、見た目や雰囲気で本当の事を言っているのかは判断出来ない。
確認する必要がある。
「……俺を解放してくれないか?
お前の話が本当か、年寄りに聞いてくる」
「君達、抵抗軍の本拠地を教えてくれるなら解放しよう」
「それは教えられない。
教えたら、俺達は皆殺しだろ?」
「そんな事はしない。
君達のリーダーに降服を勧めるだけだ」
俺は気持ち悪い"ヤツ"の顔を睨む。
「信用できないな。
さっきの話もそうだ。
ここ15年で俺達はお前達に随分殺された。
俺はどうしてもお前達が平和的に解決するとは思えない」
すると"ヤツ"は俺達で言うところの【口】の形を歪めた。
「最もな意見だ。
確かに我々は、この国を一つ乗っ取った。
それが15年前の事だ。
それからずっと抵抗軍と戦っている」
「お前の言う事が本当なら、国を乗っ取った時点で、土地も資源も手に入れたことになる。
もう戦う必要はないはずだ!!」
すると"ヤツ"はまた息を吐いた。
「仕方ないだろう。
この国を取り返そうと、君等が攻めてくるのだから。
我々は生きる為にこの星に来たのだ。
座したまま殺されるつもりはない」
「そんな事はない!
お前達から攻めて来ることもある!」
「君達は際限なく攻めて来る。
守る為とは言え、君だったらどんな作戦を取る?
相手の根城を潰さないか?」
「だったら、俺が本拠地をお前達に教えたら、お前達は本拠地を潰しにくるんじゃないのか!?」
すると"ヤツ"は二つの大きな目を俺に向ける。
「まるで話が進まない。
君が我々に抱く固定概念を払拭しない限り、何があっても君は我々を信用してくれそうもないな」
「当たり前だ。
俺達の中でも裏切りなんてのはしょっちゅうだ。
ましてや宇宙人の言うことなんて信用出来るか!」
「我々から見れば、君達こそ宇宙人だ。
しかし我々は【差別】などしない。
我々が一言でも君達を『気持ち悪い』と言ったことがあるか?
ないだろう。
争いの発端は【差別】であると、我々は君達よりも長い歴史の中で経験しているからだ。
そして【争い】は何も生まない。
【争い】の結果、我々の星は滅びたのだからな」
その言葉で俺の怒りは頂点に達した。
「俺達を億単位で殺しておいて何言ってやがる!」
俺は怒鳴った。
拘束されていなかったら、俺は"ヤツ"をぶっ叩いていただろう。
「言った筈だ!
我々は生きる為にこの星に来たのだ!
それが【悪】だとは思わない!
だから1人たりとも我々は君達に殺されない!
君達も死にたくなかったら我々に関与しないことだ!
君達が何もしなければ、我々も何もしないと約束しよう!」
"ヤツ"も俺に負けない程の大きな声で怒鳴った。