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「我々の故郷の星は死にかけていた。

だから我々は他に住める惑星を探し、ここまで来た」


「なんでこの星だったんだ?

惑星なんて他にいくらでもあるだろう!」


「我々の星と同じ様な大気を持ち、平均気温が30度未満で水があり、そして一番近い惑星がここだったのだ。

重力の件は仕方なく無視した。

他意はない」


「それで無理矢理この星に乗り込んできたのか?」


「その言い方には語弊がある。

我々は事前に君達とコンタクトを取った。

『我々約1億人は新たに住む場所を求めてやってきた。

我々の技術と交換に、どうか我々にこの星の土地の一部を提供して欲しい』と」


「ちゃんと土地は与えたと聞いている」


「確かに貰った。

最初のコンタクトから土地を提供してもらうまで、この星の暦で1年以上もかかったがな」


「なのになんで……」


「30年も前の事だ。

おそらく君は生まれていない。

君は我々に与えられた土地がどんな場所か知っているか?」


「……いいや」


「赤道直下の砂漠のど真ん中だ。

取り敢えずとのことだったので、我々も技術の一部を提供した。

しかしそれから10年。

新しい土地は全く提供されず、我々も限界を迎えつつあった」


「限界?

我慢の限界ってことか?」


「違う。

我々は短慮ではない。

しかし我々の技術でも、故郷の星からこの星まで、一瞬で来られたわけではない。

乗組員の殆どは冷凍冬眠していたのだ。

しかし、冷凍冬眠は永遠に出来るわけではない。

ここに来るまでに気の遠くなる年月を掛けたから、その時は既に乗組員全員が冬眠から目覚めようとしていた」


「……それで?」


「冷凍冬眠が出来なくなれば、当然1億人分の水と食料が必要になる。

砂漠の真ん中にそんな物があるか?

だからその時我々は君達に食料の提供を望んだ」


「……食料はちゃんと渡した筈だ」


「確かに提供された。

我々の要求の1000分の1にも満たない量がな。

生きる為、仕方なく我々は君達に宣告した。

『1年以内に資源のある土地、もしくは食料を提供しないのであれば、武力行使もやむを得ない』と」


「勝手な事言うな。

俺達にだって都合がある。

この星の人間はかなりの数だ。

住む場所は限られ、国によっては貧困に喘いでいる。

そんな中で、どうしてお前達に協力出来る?」


「だからその分、我々は我々の持つ技術を提供すると言った。

君達の技術では、宇宙に出るのもままならないだろう?

だが我々の技術を使えば簡単だ。

君達の宇宙開発計画は200年は早く進む。

スペースコロニーの開発も夢ではない」


「だったら自分達でコロニーを作ってそこに住めば良かったじゃないか!」


「そんな資源はなかった!

我々は冷凍冬眠状態でカプセルに入り、そのカプセルは隙間なく並べられた状態で船に詰まれていたんだ。

君達に比べれば我々は小さいとは言え、我々1億人が普通に暮らせるスペースがどれくらいか、想像出来るか?

我々の乗ってきた船を分解しても、そんなコロニーは到底作れない!」


「……他の星で資源だけ拾って、その資源を作れば……」


「いくら我々でも、無から有は作れない。

我々に必要な資源を有したのが、この星だったということだ」