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目が覚めた。
見えるのは土の露出した天井と壁。
この監獄はいつ崩れてもおかしくない、と思ってから何日が過ぎただろう。
俺は寝台から降りる。
床には栄養剤の混じった水が入った器が置かれていた。
俺はそれを一気に体内に取り込み、格子の嵌った窓から空を見上げる。
空には小さな太陽が輝いていた。
栄養と水と光。
それだけあれば俺達は生きていける。
"ヤツラ"はそれを熟知していた。
だから"ヤツラ"はこうやって俺をギリギリのところで生かしている。
音が聞こえた。
規則正しい連続音。
"ヤツラ"特有の足音だ。
足音はこの監獄の前で止まり、やがて鉄扉が開かれる。
「出ろ」
"ヤツラ"の1人が俺達の言葉で言った。
悔しいが"ヤツラ"の技術は凄まじい。
この星に到着して1日程で、この星の言語ほぼ全てを理解したらしい。
そして、難なく俺達とのコミュニケーションを確立した。
俺は"ヤツラ"の気持ち悪い顔を見ながら監獄を出る。
手足全てを拘束され、狭い廊下を引きずられた。
"ヤツラ"は俺達の半分ぐらいの大きさしかない癖に、やたらと力がある。
どうやら、"ヤツラ"の故郷の星は俺達の星より重力が大きかったらしい。
その強い重力に引っ張られ、"ヤツラ"はそれ程大きくは進化しなかったのだろう。
やがて俺はいつもの尋問部屋に連れ込まれた。
「そろそろ喋ってくれないか?」
席に着くなりそう言われた。
目の前に"ヤツ"の顔がある。
最初はそんな顔の区別などつかなかったが、最近ではなんとなく見分けられるようになってきた。
それでも何度見ても馴染めないつくりの顔で、特に数箇所ある穴が気持ち悪い。
「その気持ち悪い顔を見せるな」
俺はいつもの台詞を吐いた。
すると目の前の"ヤツ"は穴の一つから大きく息を吐く。
「どうしてそう君達は攻撃的なんだ?」
"ヤツ"の言葉に、俺は簡単に怒りを露(あらわ)にする。
「当たり前だろ!
自分達が何をしたのか、解らないのか!?」
すると"ヤツ"は感情を読み取れない目で、暫し俺の事を見つめる。
「……そうだな。
少しは互いに理解を深めあった方が良いようだ」
そして"ヤツ"は、回想するように事の発端から話し始めた。